このコラムで伝えたいこと(まず前提)
このコラムは、
「会社で事業をしながら、不動産も持っている(持とうとしている)」
「本業と不動産、お金の全体像をどう整理したらいいか分からない」
という 中小企業オーナーの方 に向けた、
「本業×不動産×資金計画」の入り口の話です。
最初に大事な前提を2つだけ置いておきます。
- ① 本業と不動産は切り離せない
決算書・銀行評価・資金繰り・相続…
どこを押しても「本業」と「不動産」はつながっています。 - ② でも、正解は1つではない
「必ず法人で持つべき」「必ず個人で」
という絶対解はありません。
会社の状況・オーナーの年齢・家族構成・借入の状況…
いろいろな要素でベストは変わります。
このコラムでは、
- 個別の税務・法務の判断ではなく
- 考え方の整理・視点の持ち方 を目的としています。
税金や登記など、具体的な判断が必要な部分については、
必ず顧問税理士・弁護士・司法書士などの専門家とご相談ください。
中小企業オーナーが不動産を持つ「3つのパターン」
まずは、現場でよく見る不動産の持ち方を
ざっくり 3つのパターン に分けてイメージしてみます。
1. 会社名義で持つパターン(法人所有)
- 会社名義で
- 事務所・店舗
- 社屋
- 事業用の倉庫
- 収益物件(アパート・一棟マンション)
を購入しているケースです。
ざっくり特徴
- 決算書に
- 資産(建物・土地)
- 減価償却費
- 借入金
が載るので、会社の姿そのものが変わる。
- 家賃収入や売却益も、基本的に会社の利益になる。
- 将来売却するときの税金や、オーナー個人が現金を引き出すときの形(役員報酬・配当・退職金など)もセットで考える必要がある。
2. オーナー個人名義で持つパターン(個人所有)
- 代表者個人の名義で
- 自宅
- 実家
- 投資用マンション・アパート
を持っているケースです。
ざっくり特徴
- 会社の決算書には載らず、
個人の 不動産所得 や 譲渡所得 の話になる。 - 会社がその不動産を借りて使う場合は、
- 会社 → 個人に地代・賃料を支払う
という形になることも。
- 会社 → 個人に地代・賃料を支払う
- 相続・贈与のときは、
個人財産としての扱いになります。
3. オーナー会社+個人の「ミックス」パターン
実務上は、このパターンがいちばん多いです。
- 自宅・投資用マンションは個人名義
- 事務所・倉庫・収益物件は会社名義
- あるいは、
- 土地は個人
- 建物は会社
など、組み合わせているケースもあります。
ミックスならではのポイント
- 会社と個人の間で、
- 賃貸借(地代・家賃)
- 売買
が行われることもある。
- そのときに、
- 税金
- 銀行評価
- 相続
などが絡んできます。
ここでのポイントは、
「法人か個人か」より、
「会社と個人を合わせた全体像」で見る視点が大事
だということです。
本業と不動産、お金の流れを整理する3つの視点
「本業×不動産×資金計画」を考えるとき、
いきなり細かい税金の話に行ってしまうと、ほぼ確実に迷子になります。
まずはもっと大きな枠で、
3つの視点だけ意識するところから始めるのがおすすめです。
視点1:損益(P/L)― 利益の出方・見え方
- 本業の利益(営業利益など)
- 不動産からの利益(賃料収入・売却益など)
が、PL(損益計算書)上どう見えるか。
ざっくりでいいので、
- 「本業の利益に、不動産がどれくらい効いているか」
- 「不動産の赤字が、本業の利益をどれくらい食っているか」
といった感覚を持っておくことが大切です。
視点2:資金繰り(キャッシュフロー)― お金の出入りのタイミング
会計上利益が出ていても、
キャッシュが先に出ていく/思ったより残らない ということはよくあります。
特に不動産は、
- 購入時の自己資金
- 毎月の返済
- 修繕費
- 売却時の残債返済・税金
など、お金の動くタイミングが大きく・長期的です。
- 「今年・来年・3年後くらいまでの資金繰り」
- 「その中で、不動産がプラスかマイナスか」
をざっくり把握しておくことが、
倒れない資金計画 には不可欠です。
視点3:財政状態・銀行目線(B/S)― 決算と融資評価
銀行は、
- 決算書(B/S・P/L)
- 事業の内容
- 代表者の属性
- 不動産の種類・場所・評価
などを総合して、融資判断をします。
不動産についても、
- 「自己使用の社屋・事務所・倉庫」なのか
- 「投資用・収益用」なのか
- 「将来売却して返済原資になり得るのか」
によって評価のされ方が変わります。
ここでは細かい点より、
「本業だけでなく、不動産も銀行から見られている」
という感覚を持っておくことがスタートラインです。
ケースごとのイメージ:よくある3つのシーン
少しイメージしやすくするために、
よくあるシーンを3つだけ挙げてみます。
ケース1:本業は伸ばしたい、でも借入も増やしたくない
- 本業はこれから投資したい
- ただし、銀行からの借入はあまり増やしたくない
- でも、手元に不動産(特に収益物件)はある
この場合の選択肢としては、
- 不動産を担保に新規融資を受ける
- 不動産を売却して借入を返済し、身軽になってから本業投資
- 不動産の借入条件を見直し、返済負担を軽くする
などが考えられます。
ここで大事なのは、
- 「不動産だけ切り取って高く売るかどうか」ではなく
- 「本業の3〜5年の計画から逆算する」 視点です。
ケース2:法人と個人に不動産がバラバラにある
- 法人名義の収益物件
- 個人名義の自宅・投資用マンション
- 社長借入金・役員貸付金もある
この場合は、
- 「法人と個人を合わせたバランスシート」を
一度ざっくり書き出してみる - そのうえで、
- どこに不動産が偏っているか
- どこに借入が偏っているか
を見る。
ここで 「全体像の棚卸し」 をしないまま、
個別の物件だけ見て動いてしまうと、後でバランスが崩れがちです。
ケース3:相続もそろそろ視野に入ってきた
- 親世代・自分の年齢的に、相続の話も避けられなくなってきた
- 会社の株と不動産がどちらも絡んでくる
この場合は、
- 事業承継(会社を誰が引き継ぐか)
- 不動産の承継(誰がどの物件を持つか)
をセットで考える必要があります。
ただし、ここは税法・会社法・相続法など、
専門的な領域も絡むため、
「不動産とお金の全体像を整理する人」と
「税理士・弁護士などの専門家」
をチームで組むイメージが現実的です。
よくある失敗パターン(ここだけは避けたい)
逆に、現場でよく見る「もったいないパターン」もいくつか挙げておきます。
失敗1:税金だけを見て決めてしまう
- 「節税になると言われたから買った/法人に移した」
- でも、
- 資金繰り
- 銀行評価
- 将来の出口(売却・相続)
まで含めると、かえって重たくなってしまうケース。
税金はもちろん重要ですが、
税金だけを最適化すると、他が歪むことがよくあります。
失敗2:目先のキャッシュだけで判断してしまう
- 「今、手元のお金が増えるかどうか」だけで決めてしまう
- その結果、
- 将来の修繕費や空室リスク
- 売却時の税金・残債
を軽く見積もってしまうことも。
短期のキャッシュフローと、長期のリスクは、
一緒に見る必要があります。
失敗3:本業の計画と、銀行への説明がバラバラ
- 本業では攻めた投資計画を出しているのに、
不動産の方では守りすぎ/逆にリスクが高すぎる、など。 - 銀行から見ると、
- 「会社としてどこを目指しているのか」
- 「不動産はその中でどう位置付けているのか」
が見えないと、評価しづらくなります。
どう考えればいいか:「本業 → 不動産 → 資金計画」の順番
では、実際にどう考え始めると整理しやすいか。
ざっくり 3ステップ にすると、次のような流れになります。
STEP1|本業の3〜5年のイメージをざっくり描く
完璧な事業計画でなくて構いません。
- 売上・利益をどうしたいか
- 設備投資や人員増を考えているか
- 借入の返済予定・新規借入の予定
など、本業の「方向性」 を先に考えます。
STEP2|不動産の「棚卸し」をする
会社・個人を合わせて、
- 物件ごとの
- 所在地
- 名義(法人/個人)
- ローン残高
- 毎月の収支(家賃 − 返済 − 経費)
- 買った理由(当時の目的)
- 今の役割(本業にどう効いているか)
をざっくり表にしてみます。
ここで初めて、
- 「本業と相性のいい不動産」
- 「今の本業ステージとは少し合わなくなってきた不動産」
が見えてくることが多いです。
STEP3|売る/保有する/買い増す…の選択肢を並べてみる
いきなり結論を出すのではなく、
- 今のまま保有し続けた場合
- 一部を売却して借入を軽くする場合
- 本業に必要な不動産を新たに取得する場合
など、いくつかパターンを並べてみます。
このとき、
- 税金
- 銀行評価
- 相続
- オーナー家族のライフプラン
など、1社・1人の専門家だけでは難しい部分も出てきます。
そこで、
「不動産とお金の全体像を一緒に整理する人」
+
「税理士・弁護士・司法書士などの専門家」
という形で、チームを組むイメージが現実的です。
まとめ|不動産は「本業の外」ではなく「本業の一部」
中小企業オーナーにとって、不動産は
- 単なる投資商品ではなく
- 本業・資金繰り・家族の将来に直結するピース
です。
だからこそ、
- 「法人か個人か」だけで切り取らず
- 「税金」だけでもなく
- 本業・資金繰り・銀行・相続を含めた全体像の中で、不動産の位置づけを決める
ことが大切だと感じています。
完璧な答えを一気に出す必要はありません。
まずは、
- 本業の方向性を言語化する
- 不動産の棚卸しをする
- いくつかのパターンを並べてみる
ここから始めてみていただければ十分です。
株式会社ICHIRYUが「本業×不動産×資金計画」でお手伝いできること
「本業と不動産、お金の全体像を一度整理したい」
「銀行・税理士・不動産会社、誰に何を相談すべきか分からない」
という中小企業オーナーの方は、どうぞ一度ご相談ください。
株式会社ICHIRYU(イチリュウ)は、
首都圏(東京・埼玉・神奈川・千葉)を中心に、全国の不動産売却・収益不動産・事業用不動産のご相談に対応しています。
- 不動産売却・収益物件・事業用不動産の実務経験
- 税理士事務所・コンサル会社での経験をふまえた、資金繰り・決算・銀行対応などの経営財務の視点
この2つをあわせ持つことを強みとして、
「本業」と「不動産」と「お金」を同じテーブルで整理するお手伝いをしています。
まずは、
- 今の本業の状況・今後の方向性
- お持ちの不動産(所在地・種別・名義・ローンの有無など)
- 将来どうしていきたいか(売却・保有・建て替え・事業承継など)
をざっくりお聞きしたうえで、
売却・保有・組み替えなどの選択肢を一緒に並べて整理していきます。
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