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中小企業オーナーのための「本業×不動産」資金計画入門|資金繰りと借入を無理なく整える考え方

2025 12/24
ブログ
2025年12月24日
目次

このコラムで伝えたいこと(まず前提)

このコラムは、

「会社で事業をしながら、不動産も持っている(持とうとしている)」
「本業と不動産、お金の全体像をどう整理したらいいか分からない」

という 中小企業オーナーの方 に向けた、
「本業×不動産×資金計画」の入り口の話です。

最初に大事な前提を2つだけ置いておきます。

  • ① 本業と不動産は切り離せない
    決算書・銀行評価・資金繰り・相続…
    どこを押しても「本業」と「不動産」はつながっています。
  • ② でも、正解は1つではない
    「必ず法人で持つべき」「必ず個人で」
    という絶対解はありません。
    会社の状況・オーナーの年齢・家族構成・借入の状況…
    いろいろな要素でベストは変わります。

このコラムでは、

  • 個別の税務・法務の判断ではなく
  • 考え方の整理・視点の持ち方 を目的としています。

税金や登記など、具体的な判断が必要な部分については、
必ず顧問税理士・弁護士・司法書士などの専門家とご相談ください。


中小企業オーナーが不動産を持つ「3つのパターン」

まずは、現場でよく見る不動産の持ち方を
ざっくり 3つのパターン に分けてイメージしてみます。

1. 会社名義で持つパターン(法人所有)

  • 会社名義で
    • 事務所・店舗
    • 社屋
    • 事業用の倉庫
    • 収益物件(アパート・一棟マンション)
      を購入しているケースです。

ざっくり特徴

  • 決算書に
    • 資産(建物・土地)
    • 減価償却費
    • 借入金
      が載るので、会社の姿そのものが変わる。
  • 家賃収入や売却益も、基本的に会社の利益になる。
  • 将来売却するときの税金や、オーナー個人が現金を引き出すときの形(役員報酬・配当・退職金など)もセットで考える必要がある。

2. オーナー個人名義で持つパターン(個人所有)

  • 代表者個人の名義で
    • 自宅
    • 実家
    • 投資用マンション・アパート
      を持っているケースです。

ざっくり特徴

  • 会社の決算書には載らず、
    個人の 不動産所得 や 譲渡所得 の話になる。
  • 会社がその不動産を借りて使う場合は、
    • 会社 → 個人に地代・賃料を支払う
      という形になることも。
  • 相続・贈与のときは、
    個人財産としての扱いになります。

3. オーナー会社+個人の「ミックス」パターン

実務上は、このパターンがいちばん多いです。

  • 自宅・投資用マンションは個人名義
  • 事務所・倉庫・収益物件は会社名義
  • あるいは、
    • 土地は個人
    • 建物は会社
      など、組み合わせているケースもあります。

ミックスならではのポイント

  • 会社と個人の間で、
    • 賃貸借(地代・家賃)
    • 売買
      が行われることもある。
  • そのときに、
    • 税金
    • 銀行評価
    • 相続
      などが絡んできます。

ここでのポイントは、

「法人か個人か」より、
「会社と個人を合わせた全体像」で見る視点が大事

だということです。


本業と不動産、お金の流れを整理する3つの視点

「本業×不動産×資金計画」を考えるとき、
いきなり細かい税金の話に行ってしまうと、ほぼ確実に迷子になります。

まずはもっと大きな枠で、
3つの視点だけ意識するところから始めるのがおすすめです。

視点1:損益(P/L)― 利益の出方・見え方

  • 本業の利益(営業利益など)
  • 不動産からの利益(賃料収入・売却益など)

が、PL(損益計算書)上どう見えるか。

ざっくりでいいので、

  • 「本業の利益に、不動産がどれくらい効いているか」
  • 「不動産の赤字が、本業の利益をどれくらい食っているか」

といった感覚を持っておくことが大切です。

視点2:資金繰り(キャッシュフロー)― お金の出入りのタイミング

会計上利益が出ていても、
キャッシュが先に出ていく/思ったより残らない ということはよくあります。

特に不動産は、

  • 購入時の自己資金
  • 毎月の返済
  • 修繕費
  • 売却時の残債返済・税金

など、お金の動くタイミングが大きく・長期的です。

  • 「今年・来年・3年後くらいまでの資金繰り」
  • 「その中で、不動産がプラスかマイナスか」

をざっくり把握しておくことが、
倒れない資金計画 には不可欠です。

視点3:財政状態・銀行目線(B/S)― 決算と融資評価

銀行は、

  • 決算書(B/S・P/L)
  • 事業の内容
  • 代表者の属性
  • 不動産の種類・場所・評価

などを総合して、融資判断をします。

不動産についても、

  • 「自己使用の社屋・事務所・倉庫」なのか
  • 「投資用・収益用」なのか
  • 「将来売却して返済原資になり得るのか」

によって評価のされ方が変わります。

ここでは細かい点より、

「本業だけでなく、不動産も銀行から見られている」

という感覚を持っておくことがスタートラインです。


ケースごとのイメージ:よくある3つのシーン

少しイメージしやすくするために、
よくあるシーンを3つだけ挙げてみます。

ケース1:本業は伸ばしたい、でも借入も増やしたくない

  • 本業はこれから投資したい
  • ただし、銀行からの借入はあまり増やしたくない
  • でも、手元に不動産(特に収益物件)はある

この場合の選択肢としては、

  • 不動産を担保に新規融資を受ける
  • 不動産を売却して借入を返済し、身軽になってから本業投資
  • 不動産の借入条件を見直し、返済負担を軽くする

などが考えられます。

ここで大事なのは、

  • 「不動産だけ切り取って高く売るかどうか」ではなく
  • 「本業の3〜5年の計画から逆算する」 視点です。

ケース2:法人と個人に不動産がバラバラにある

  • 法人名義の収益物件
  • 個人名義の自宅・投資用マンション
  • 社長借入金・役員貸付金もある

この場合は、

  • 「法人と個人を合わせたバランスシート」を
    一度ざっくり書き出してみる
  • そのうえで、
    • どこに不動産が偏っているか
    • どこに借入が偏っているか
      を見る。

ここで 「全体像の棚卸し」 をしないまま、
個別の物件だけ見て動いてしまうと、後でバランスが崩れがちです。

ケース3:相続もそろそろ視野に入ってきた

  • 親世代・自分の年齢的に、相続の話も避けられなくなってきた
  • 会社の株と不動産がどちらも絡んでくる

この場合は、

  • 事業承継(会社を誰が引き継ぐか)
  • 不動産の承継(誰がどの物件を持つか)

をセットで考える必要があります。

ただし、ここは税法・会社法・相続法など、
専門的な領域も絡むため、

「不動産とお金の全体像を整理する人」と
「税理士・弁護士などの専門家」

をチームで組むイメージが現実的です。


よくある失敗パターン(ここだけは避けたい)

逆に、現場でよく見る「もったいないパターン」もいくつか挙げておきます。

失敗1:税金だけを見て決めてしまう

  • 「節税になると言われたから買った/法人に移した」
  • でも、
    • 資金繰り
    • 銀行評価
    • 将来の出口(売却・相続)
      まで含めると、かえって重たくなってしまうケース。

税金はもちろん重要ですが、
税金だけを最適化すると、他が歪むことがよくあります。

失敗2:目先のキャッシュだけで判断してしまう

  • 「今、手元のお金が増えるかどうか」だけで決めてしまう
  • その結果、
    • 将来の修繕費や空室リスク
    • 売却時の税金・残債
      を軽く見積もってしまうことも。

短期のキャッシュフローと、長期のリスクは、
一緒に見る必要があります。

失敗3:本業の計画と、銀行への説明がバラバラ

  • 本業では攻めた投資計画を出しているのに、
    不動産の方では守りすぎ/逆にリスクが高すぎる、など。
  • 銀行から見ると、
    • 「会社としてどこを目指しているのか」
    • 「不動産はその中でどう位置付けているのか」
      が見えないと、評価しづらくなります。

どう考えればいいか:「本業 → 不動産 → 資金計画」の順番

では、実際にどう考え始めると整理しやすいか。
ざっくり 3ステップ にすると、次のような流れになります。

STEP1|本業の3〜5年のイメージをざっくり描く

完璧な事業計画でなくて構いません。

  • 売上・利益をどうしたいか
  • 設備投資や人員増を考えているか
  • 借入の返済予定・新規借入の予定

など、本業の「方向性」 を先に考えます。

STEP2|不動産の「棚卸し」をする

会社・個人を合わせて、

  • 物件ごとの
    • 所在地
    • 名義(法人/個人)
    • ローン残高
    • 毎月の収支(家賃 − 返済 − 経費)
  • 買った理由(当時の目的)
  • 今の役割(本業にどう効いているか)

をざっくり表にしてみます。

ここで初めて、

  • 「本業と相性のいい不動産」
  • 「今の本業ステージとは少し合わなくなってきた不動産」

が見えてくることが多いです。

STEP3|売る/保有する/買い増す…の選択肢を並べてみる

いきなり結論を出すのではなく、

  • 今のまま保有し続けた場合
  • 一部を売却して借入を軽くする場合
  • 本業に必要な不動産を新たに取得する場合

など、いくつかパターンを並べてみます。

このとき、

  • 税金
  • 銀行評価
  • 相続
  • オーナー家族のライフプラン

など、1社・1人の専門家だけでは難しい部分も出てきます。

そこで、

「不動産とお金の全体像を一緒に整理する人」
+
「税理士・弁護士・司法書士などの専門家」

という形で、チームを組むイメージが現実的です。


まとめ|不動産は「本業の外」ではなく「本業の一部」

中小企業オーナーにとって、不動産は

  • 単なる投資商品ではなく
  • 本業・資金繰り・家族の将来に直結するピース

です。

だからこそ、

  • 「法人か個人か」だけで切り取らず
  • 「税金」だけでもなく
  • 本業・資金繰り・銀行・相続を含めた全体像の中で、不動産の位置づけを決める

ことが大切だと感じています。

完璧な答えを一気に出す必要はありません。
まずは、

  1. 本業の方向性を言語化する
  2. 不動産の棚卸しをする
  3. いくつかのパターンを並べてみる

ここから始めてみていただければ十分です。


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